妊娠糖尿病について【医師が解説】|東京都小金井市の武蔵小金井みどりクリニック|内科・糖尿病内科・甲状腺疾患・生活習慣病・高血圧症・脂質異常症・内分泌疾患・予防接種

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妊娠糖尿病について【医師が解説】

妊娠糖尿病について【医師が解説】|東京都小金井市の武蔵小金井みどりクリニック|内科・糖尿病内科・甲状腺疾患・生活習慣病・高血圧症・脂質異常症・内分泌疾患・予防接種

妊娠糖尿病とは?母体と赤ちゃんを守るために知っておきたい基礎知識

はじめに

妊娠中の健診で「血糖値が高いですね」「尿糖が出ています」「妊娠糖尿病かもしれません」と言われ、不安になったことはありませんか?

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常(血糖値が高くなる状態)のことです。妊婦さんの約1020%に認められる比較的頻度の高い病気であり、決して珍しいものではありません。

多くの場合、自覚症状はほとんどなく、妊娠に伴う体調の変化との区別が困難です。そのため妊婦健診を定期的に受診し、尿・血液検査による早期発見が重要となります。適切な管理を行わないと、お母さんだけでなく赤ちゃんにもさまざまな影響を及ぼす可能性があります。一方で、早期に発見し適切な治療を行うことで、多くの方が安全に出産を迎えることができます

今回は、妊娠糖尿病の原因や診断、治療方法など妊娠を控えている方妊娠中の方が知っておきたい基礎知識をお伝えできればと思います。

 

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、「妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常(血糖値が高くなる状態)」のことです。妊娠中の母体の血糖が上がってしまうだけではなく、流産・早産のリスクや、巨大児、低血糖、発育不全など赤ちゃんにも合併症のリスクが生じてしまいます。しかし、早期の発見・治療を行うことで多くの方が安全に出産を迎えることができます。妊婦健診で尿糖陽性や血糖値の異常を指摘された場合は、早めに専門的な評価を受けることが重要です。

※妊娠前から糖尿病がある場合は「糖尿病合併妊娠(PGDM)」と呼ばれ「妊娠糖尿病(GDM)」とは区別されます。また、「妊娠中に発見/発症した明らかな糖尿病(ODP)」とも区別されます。

妊娠糖尿病のリスクについて

次のような方は妊娠糖尿病になりやすいことが知られています。

  • ✅ 肥満(BMI 25以上)
  • ✅ 35歳以上の妊娠
  • ✅ 両親や兄弟姉妹に糖尿病の方がいる
  • ✅ 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある
  • ✅ 尿糖陽性を指摘されたことがある
  • ✅ 妊娠糖尿病の既往がある
  • ✅ 巨大児(出生体重4,000g以上)の出産歴がある

ただし、これらのリスクがない方でも発症することがあり妊婦健診での検査が重要です。

妊娠糖尿病の原因について

妊娠すると出産や授乳の準備として、胎盤という母体と胎児をつなぐ組織からさまざまなホルモンが分泌され、母体には多くの変化が生じます。これらのホルモンには血糖値をコントロールするインスリンの働きを弱める作用があり、妊娠後期になるほど血糖値が上昇しやすくなるとされています。

これらの変化に対して、通常はインスリン分泌が増加することで血糖値を正常に保つように調整されます。しかし、もともとインスリンの分泌が十分でない場合や、インスリンへの反応が十分でない場合には、変化への対応ができず血糖値が高くなってしまい妊娠糖尿病を発症してしまうとされています。

 

妊娠糖尿病の検査について

  • 尿糖:スクリーニング検査として行われます。妊娠すると腎性糖尿という尿に糖が出やすくなる変化をきたしますが、一方で妊娠糖尿病のリスクでもありますので、血液検査や75gOGTTという精密検査を行います。
  • 随時血糖:スクリーニング検査として行われます。妊娠前とは基準値が異なり、95もしくは100mg/dL以上で精密検査である75gOGTTを行います。
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT):妊娠糖尿病の診断に必要な検査です。ブドウ糖を含んだソーダ水を飲んだ後、血液検査によって1時間後の血糖値と2時間後の血糖値を確認します。また、ソーダ水を飲む前の血糖値も確認します。

HbA1c:「妊娠糖尿病」での診断には用いませんが、「妊娠中に発見/発症した明らかな糖尿病」との判断に用います。

妊娠糖尿病の診断方法

日本では妊婦健診の際に尿検査、血糖検査が行われ、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)が実施されます。以下のうち1項目以上を満たした場合に妊娠糖尿病と診断されます。

  •  空腹時血糖値:92mg/dL以上
  •  1時間値:180mg/dL以上
  •  2時間値:153mg/dL以上

非妊娠時の診断基準と比較して、妊娠糖尿病の診断基準は非常に厳しい数字となっており、上記のうち1つでも該当する場合には妊娠糖尿病の診断となります。

妊娠糖尿病が母体に与える影響

血糖コントロールが不良な状態が続くと、母体において以下のような合併症のリスクが高くなります。

  • 流産・死産のリスク:妊娠中の血糖コントロールが不良な場合、流産や死産のリスクが上がります。
  • 妊娠高血圧症候群:妊娠中に血圧が高くなる病気です。重症化すると母体や胎児に大きな負担を与えることがあります。
  • 羊水過多:羊水量が増加し、お腹の張りや早産の原因となる場合があります。
  • 帝王切開率の増加:母体の肥満や赤ちゃんが大きく育ちすぎてしまう等が原因で、経腟分娩が困難になることがあります。

 

妊娠糖尿病が赤ちゃんに与える影響

母体の血糖コントロールが不良な場合、母体だけでなく胎児への様々なリスクが挙げられます。

  • 巨大児:母体の血糖値が高いと、赤ちゃんにも多くの糖が送られます。その結果、赤ちゃんが大きく成長しすぎることがあり、特に肩や体幹が大きくなりすぎてしまうと、分娩時に難産リスクとなるため帝王切開を検討する必要があります。
  • 新生児低血糖:出生後も赤ちゃんの体内ではインスリンが多く分泌されているため、出産後に低血糖になることがあります。
  • 呼吸障害:肺の成熟が遅れ、新生児期に呼吸管理が必要となる場合があります。

妊娠糖尿病の治療

妊娠糖尿病の治療では、お母さんと赤ちゃんの健康を守るために適切な血糖管理が重要です。治療の基本は食事療法です。しかし、それだけでは血糖値が目標に達しない場合にはインスリン療法を行います。

1. 食事療法

治療の基本は食事療法です。妊娠中は極端な食事制限を行わず、母体と胎児に必要な栄養を十分に確保しながら血糖値を管理します。一人一人の患者様に合わせて、管理栄養士と相談しながら適切なエネルギー量や栄養バランスを決定することが重要です。

 

2. インスリン治療

食事療法のみで目標血糖値を達成できない場合には、インスリン治療を行います。注射による治療には抵抗があるかと思いますが、妊娠中は胎児への安全性の観点から、経口糖尿病薬よりもインスリンが標準治療として用いられています。これはインスリンが胎盤を通過することなく、胎児への影響がないため、安全に使用できるからです。

また、妊娠糖尿病の場合、出産後にインスリンが必要になることはほとんど無く、すぐにインスリン療法から離脱することができます。

まとめ

妊娠糖尿病は妊娠中によくみられる病気ですが、適切な管理を行うことで多くの方が安全に出産を迎えることができます。特に妊娠中の血糖管理は、お母さんだけでなく赤ちゃんの健康にも大きく関わります。妊婦健診で血糖値の異常を指摘された場合は、早めに専門的な評価を受けることが重要です。

当院では妊娠糖尿病の診療において、産科主治医の先生と密接に連携しながら治療を進めています管理栄養士による食事療法の指導、看護師による血糖自己測定の導入・指導、必要時のインスリン治療まで、一人ひとりの状況に合わせたサポートを行っています。

妊娠糖尿病の多くは出産後すぐに改善しますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高いことが知られています。そのため出産後も定期的な血糖検査を受けることが大切です。また、次回妊娠時にも妊娠糖尿病を再発する可能性があるため、継続的な健康管理が推奨されます。

「妊婦健診で血糖値が高いと言われた」「尿糖が陽性となった」「妊娠糖尿病と診断されたが何をすればよいかわからない」など、ご不安なことがありましたらお気軽にご相談ください。当院では母体と赤ちゃんの安全を第一に考え、安心して出産を迎えられるようお手伝いいたします。

参考文献

  • 糖尿病診療ガイドライン 2024「妊娠と糖尿病」、日本糖尿病学会
  • 妊婦の糖代謝異常 診療・管理マニュアル 第4版、日本糖尿病・妊娠学会

筆者 井上光子(副院長)
日本糖尿病学会 糖尿病専門医・指導医
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・指導医
内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医(領域指導医)

武蔵小金井みどりクリニック
糖尿病内科・内分泌内科・内科

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