妊娠と甲状腺について|東京都小金井市の武蔵小金井みどりクリニック|内科・糖尿病内科・甲状腺疾患・生活習慣病・高血圧症・脂質異常症・内分泌疾患・予防接種

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妊娠と甲状腺について

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妊娠と甲状腺について

女性のライフスタイルと甲状腺

甲状腺の病気は男性と比べて女性の頻度が高いことが知られており、下の表のように甲状腺疾患全体の発症頻度は5−8倍も高いとされています。

また、必ずしも遺伝するわけではありませんが、お母さんに甲状腺の病気がある場合、娘さんの甲状腺疾患リスクが4-5倍であり十分な注意が必要です。そして、甲状腺疾患は20-40歳代といった妊娠可能年齢に発症し、治療が必要になることが少なくないため、ライフスタイルに合わせた治療が必要です

今回は妊娠と甲状腺疾患に関して見ていきます。

妊娠と甲状腺疾患

甲状腺ホルモンは女性の体に大きな影響を与えています。月経や排卵のリズムを整えるだけでなく、妊娠のしやすさ流産・早産リスク妊娠中の母体に深く関わるホルモンです。また、胎盤を通して胎児に移行し、胎児の精神・知能を含めた脳や神経の発達に深く関わります。出産後にもバセドウ病の悪化無痛性甲状腺炎(産後甲状腺炎)の発症など様々な影響を及ぼします。

 

バセドウ病と妊娠

治療目標について

バセドウ病は妊娠するまでに甲状腺ホルモンが安定していることが理想です(Free T3, Free T4が正常)。甲状腺機能が安定していれば、一般の妊婦さんと変わりなく出産することができます。

一方、甲状腺ホルモンが安定していない状況で妊娠した場合、流産・早産リスクが上がる可能性があります。妊娠高血圧症候群といった合併症のリスクや、甲状腺クリーゼという母子の生命に関わる状態を避ける必要があります。

 

内服治療について

バセドウ病の内服治療に使用するメルカゾール(一般名:チアマゾール)は、妊娠初期(9週6日まで)に使用していると臍腸管遺残や臍帯ヘルニア、頭皮の欠損といった胎児の催奇形性のリスクが知られています。これらの頻度は高いものではありませんが、妊娠を考えている場合は、プロパジール(一般名:プロピルチオウラシル)への変更を考慮します。しかし、治療の効果はメルカゾールの方が高いため、患者様一人一人の病状を踏まえる必要があり、場合によってはメルカゾールを継続する事があります。(バセドウ病治療ガイドライン2019, CQ参照)

 

授乳について

抗甲状腺治療薬は乳汁への移行が知られていますが、内服している量によって授乳は可能です。メルカゾール10mg/日またはプロパジール300mg/日までは、児の甲状腺機能をチェックすることなく投与が可能です。また、服用するタイミングによってはこれより多い内服量でも授乳できることがありますので、必ず主治医の先生と相談するようにして下さい。

 

産後の治療について

母体の病状にも注意が必要です。産後はバセドウ病の再発あるいは悪化が起こりやすいことが知られています。また、産後約4ヶ月までの期間に無痛性甲状腺炎が発症しやすいことも知られています。これら2つの病状が組み合わさって関連するため、様々な経過をたどることがあります。

 

まとめ

以上のように、バセドウ病の患者さんであっても適切な治療により安全に出産し、授乳・育児を行うことは十分可能です。挙児希望の患者様は主治医の先生と是非ご相談下さい。

➡️「ブログ甲状腺中毒症について」

 

橋本病と妊娠

橋本病(甲状腺機能低下症)も妊娠に際して注意が必要です。甲状腺機能低下症になっている場合、不妊や流産リスクが上がります。妊娠成立を考慮した場合には、チラーヂンS(一般名:レボチロキシンナトリウム水和物)を使用し甲状腺刺激ホルモン値(TSH)<2.5μIU/L未満にコントロールします。これは妊娠14週までの目標値であり、14週以降は3.0μIU/mL未満になりますが、当院では分かりやすく「妊娠中は2.5μIU/L未満にしましょう」とお伝えしています。妊娠を考慮しない場合に比べてしっかりと薬を増やし、適切に内服する必要がありますが、甲状腺機能低下が改善されれば、正常な妊婦と変わらない経過をとります。

ただし、妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、服用量を適切に増量する必要があります。チラーヂンSは妊娠中から産後、授乳中でも安全に服用することができるお薬です。自己判断での中断は決してなさらないようにして下さい。

➡️「ブログ甲状腺機能低下症について」

まとめ

甲状腺の代表的な疾患であるバセドウ病・橋本病と妊娠について解説いたしました。治療が安定している方は過度に心配する必要はなく、適切な治療により一般の妊娠経過をたどります。注意すべき点を押さえて、気になる症状などあれば主治医の先生に必ず相談して下さい。

また、橋本病では甲状腺は腫れるものの症状が全く無くお薬も必要としない方がほとんどですが、挙児希望のある方は早めに甲状腺ホルモン剤での治療を行うことがあります。近隣の産婦人科と連携しておりますので、是非ご相談ください。

 

参考文献

🟢 家族歴について
 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589909020300253?via%3Dihub
🟢 甲状腺疾患全体のリスクについて
 https://www.thyroid.org/media-main/press-room/
🟢 バセドウ病のリスクについて
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17154078/
🟢 無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、橋本病のリスクについて
 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra021194
🟢 甲状腺悪性腫瘍のリスクについて
 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/24_thyroid.html#anchor1
🟢 日本甲状腺学会、バセドウ病ガイドライン2019
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/11/111_2279/_pdf
🟢 日本甲状腺学会、バセドウ病ガイドライン2019、CQについて
    https://www.japanthyroid.jp/doctor/img/basedou_2019cq.pdf

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